<前ページより>
貴子さんの顔からは、幾筋かの白い粘液が跡を描きながら、ゆっくりと頬をなぞります。
昨日までは触れることも出来なかった貴婦人の品のある顔立ちが、私の白濁色で彩られているのです。
他人の妻を一夜妻として独り占めした恍惚の感情と、満たされた支配欲を味わいながら、荒い呼吸が静まっていく彼女を見つめていました。
枕元のティッシュを取り、彼女の顔を濡らす私の証を拭き取りました。
お互いの目線が重なり合い、愛くるしい貴子さんの瞳に引く寄せられるように私は顔を近づけ、キスをしたのです。
「やっぱり… 川島さんは思っとおりの人だった…」
彼女の悪戯混じりの言葉に、思わず訳を聞き返しましたが、笑みを浮かべたまま答えてはくれませんでした。
彼女を抱き寄せ、お互い無言のまま仰向けになりベージュ色の天井を見つめていました。
「今頃… どうしてるのかな…」
彼女が小さく呟きました。
隣室の夫を想う言葉に不意の嫉妬が込み上げます。
でも、私自身も由香里のことを同じように想っていたのです。
由香里も、満ち足りた悦びの時を過ごしているのだろうか…
沢田さんの欲望を受け入れ、一夜の夫婦として深く結ばれているのだろうか…
「きっと、同じように…」
私の言葉に彼女も小さく頷いたのです。
ちょうどその時、部屋の電話が鳴りました。
沢田さんからに違いありません。わざと数コールの間を開けてから受話器を取りました。
「川島さん… 今から部屋に… こちらの部屋に来れますか… 奥様を… 奥様の姿を見てあげて下さい…」
電話での沢田さんの声は、懸命に何かを押し殺した… 悦楽の喘ぎを飲み込んだ声だったのです。
「判りました… 今から行きます…」
「私の部屋の鍵は… 貴子が… 貴子が持っています… そのまま入ってきて下さい…」
貴子さんは、電話のやり取りを全て察していました。
私と彼女は乱れた着衣をバスローブに着替えました。鏡の前で化粧と髪を整える貴子さんの横顔は、まるで次の淫らな時へと出かける美女の淫らさを漂わせます。
「行きましょう… 由香里さんも待ってるわ… 川島さんに自分の姿を見て欲しいって想いながら」
さっきまでの愛くるしい貴子さんの口元は、妖艶な娼婦の微笑みに変わっていたのです。
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