この日の出来事は、私にとって真奈美さんとの新たな関係の始まりでした。それは決して恋人同士という繋がりでは無かったのかも知れません。彼女にとっては、あくまでも寂しさを紛らわすための「遊びのセックス」だったのでしょう。
ですが、恋愛経験も決して多くはない22才の私は、女性が男性に体を委ねるには、相手に対する好意が無ければ出来ないことだと信じていたのです。
たとえ彼女にとって「遊び」だったとしても、その対象として私を選んだのは、恋愛感情を抱いているからだと思っていたのです。
真奈美さんにとって私は単なる浮気相手なのだろうか…
それとも人には言えない秘密の恋人なのだろうか…
彼女の想いを確かめたかったのですが、その事によって手に入れた関係を壊してしまうことを怖れて口にすることは出来ませんでした。
真奈美さんに連絡するのは暫く控えた方がいいのかも…
離婚に悩んでいる彼女に付け込むようなことをしたら、見透かされ、軽蔑されてしまう…
週が明け、数日経った日の午前、私は真奈美さんの携帯に電話をしました。彼女の勤務時間帯であることは判っていましたが、焦りと不安で何も手に付かなくなってしまったのです。
仕事中は私用の携帯電話に出れないのかも 何度電話しても繋がらなかったので、貰った名刺に書いてある事務所の番号に電話をしました。
「川島といいます。生命保険の契約の件で、水沢真奈美さんをお願いしたいのですが」
電話に出た社員の人に彼女へ取り付いで貰うだけなのに、緊張と不安で鼓動が高鳴ります。
「水沢です お世話になっています」
「川島です あ… あの…」
「ご用件を伺ってもよろしいですか」
真奈美さんの事務的な応対に、私は戸惑いと失望を感じながら話しを続けました。
「あの、この前に勧めてもらった保険のこと、もっと知りたくて」
「ありがとうございます。お渡ししたプラン以外にも資料がありますので、お昼休みに伺ってもよろしいですか」
「はい、解りました。お願いします」
その後、私は手続きについての話しを少ししてから電話を切りました。
こんな話しをしたかった訳じゃないのに…
もしかしたら、「遊び」というのは本当だったのか…
この前の土曜日の出来事は、彼女にとっては既に無かったことなのだろうか…
いや、そんな筈はない
仕事中で周りに人がいるから取り繕っただけなんだ…
込み上げる真奈美さんへの疑念が、私の冷静さを掻き乱します。
裏切られたような思いに打ちひしがれながら、ミーティングルームの使用予約を端末から済ませました。
先程からの鼓動の昂りは収まりそうにありません。女性に対してこれ程までの切ない感情を抱くのは初めてでした。
早く… 早く真奈美さんに会いたい…
私は苛立ちながら幾度も時計を目にし、約束の時間が来るのを待ち続けたのです。
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