<前ページより>
その日は初対面ということもあり、四人で食事をするだけの予定で沢田さん夫婦と逢ったのです。
相手を気に入れば先方にその事を伝え、お互いが同意したら日程を調整して再会し、夫と妻を交換をする約束でした。
沢田さんが予約してくれたレストランで食事をしながら、テーブルを挟んで目の前にいる貴子さんの姿に、私は密かに引き込まれていきました。
貴婦人のような人妻を抱きしめ、男としての性の欲望を心ゆくまで満たしたい…
貴子さんの体を他人の私が奪い取り、思いのままに愛したい…
沢田さんは私の妻を一目で気に入ったらしく、夫婦4人で近郊のアウトレットへ買い物に行く計画を、次回がある前提で妻に話していたのです。それは彼女へ夫婦交換の同意を伝える、あからさまな意思表示でした。
妻も彼に好感を持っているようで、私に対して予め決めたサインで密かに同意を伝えてきたのです。
夫の私から見ても、沢田さんなら妻の体を差し出しても構わない… 彼女の全てを愛して欲しいと思える方でした。
彼の欲望を私の妻で満たして欲しい、由香里自身も彼と結ばれることで、新しい悦びを知ることが出来る筈だ… 食事をしながら、心の奥ではそんな事を想っていたのです。
ですが、私には気掛かりなことが一つだけありました。
沢田さんからの積極的な誘いは、奥様である貴子さんからの同意を確かめた上での事なのか…
私はその事を気にしながらも、努めてその場の会話が弾むように気を配りました。
あとは貴子さんの同意さえあれば、夫婦交換が成立する…
時折、淫らな想像がフラッシュのように頭をよぎります。
食事をする貴子さんの胸の谷間に露わな欲望を感じたり、彼女の口元に私自身の強張りを重ね合わせたり…
慌てて平静を装い、何食わぬ顔で会話の続きに参加したのです。
食事が終わり、店の外へ出てから街の灯りに照らされた通りを暫く四人で歩きました。すれ違う他の人には、私達が今夜会った理由など知る由もないことでしょう。
私は未だ、その秘密の顔合わせの答えを知らされていないのです。
貴子さんの様子を横目で気にしながら、込み上げてくる苛立ちに似た感情を押し殺していました。
「もし宜しければ、次回のお約束をさせて下さい」
地下鉄の駅に入る階段の踊場で、沢田さんは妻にまるで告白でもするように打ち明けました。
貴子さんは笑みを浮かべながら「それはご主人にお伝えすることでしょ」と私に顔を向けます。
「こ… こちらこそ、よろしくお願いします」
私も慌てて、沢田さんにではなく貴子さんに返事をしてしまったのです。
混雑した改札の入り口で沢田さん夫婦と別れ、私達は別の路線の改札へと向かいました。
「貴子さんが綺麗な人でよかったね」
妻は明るく笑いながらも、何かを確かめたげな表情で私の顔を覗きこみます。
もしかしたら妻も私に嫉妬しているのかな…
詮索の誘い水にのらないように気を付けながら、次に会う日への期待で締めつけられる胸の高まりを妻に隠したのです。
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