私はフロントでの受付を済ませると、手にした鍵の部屋番号を確かめてから真奈美さんの少し先を歩きました。
緊張していることを気付かれないようにしなきゃ…
少しでも男らしい振る舞いをしなきゃ…
次第に速まる呼吸を真奈美に気付かれないように、息を押し戻しながら重いドアを開け、部屋の中に入ったのです。
柔らかな照明に照らされる白い部屋には、微かに音楽が漂います。中央には銀色の小さな装飾が施されたダブルのベットが置かれ、白い枕が二つ並んでいます。私の心とは真逆のような落ち着いた部屋の雰囲気が、一層、高鳴る鼓動を駆り立てるのです。
あのベットの上で真奈美さんと…
密かに憧れるだけしか出来なかった真奈美さんと…
彼女は脇にあるソファーにバックを置くと、スカートの裾に手を添えながらその脇に座りました。彼女は後ろめたさや引け目を表に出すこともなく、その凛した振る舞いがさらに私の焦りを駆り立てます。
これが真奈美さんが言ってた遊びということなのか…
割り切りだからこそ、10才も年下の自分を相手にしてくれるのか…
彼女に気付かれないように込み上げる生唾を呑み込みます。
落ち着け…
セックスの経験ならあるんだ…
初めてじゃないんだ…
真奈美さんは、立ったままの私を見上げながら、隣りに座るよう、目で促します。僅かな距離を置いて、私は彼女の横に並ぶように座りました。
「今日… いろんなとこ歩いたから、真奈美さん、疲れていない?…」
私には、そう話しかけることが精一杯でした。
「ううん… 大丈夫だよ…」
会話はすぐに途切れ、僅かな無言の時間すら長く感じます。ほのかに漂う真奈美さんの香りが、ずっと抱き続けた年上の女性に対する憧憬を呼び起こします。
スカートの裾下から見える美しい線の脚…
手を伸ばせば届く均整な膨らみの胸…
幾度も自慰の対象とし続けた真奈美さんの体が傍らにあるのです。喉を締め付けるような緊張と鼓動の中で、抱き続けてきた密かな妄想と目の前の現実が交錯します。
昨日までは、かなわぬ想いを遂げる唯一つの方法と信じ、保険契約との交換条件で真奈美さんの体を得ることを企みました。それなのに、その場になって怖じ気付いて言葉に出来なかった臆病な私にとって、今、彼女と二人でこの場にいることへの現実感が追い付いて来ないのです。
彼女と目を合わせることも出来ず、落ち着きなく視線を逸らす私に対して、真奈美さんはもどかしく思ったのでしょうか。
「川島くん…」
不意に名前を呼ばれ、思わす真奈美さんに顔を向けました。
彼女の口元がゆっくりと近づいてきた瞬間、私の心を押し留めていた緊張と戸惑いが、一気に欲望のかたまりへと豹変したのです。
夢中で彼女の唇に自分の唇を押し付けると、背中に手をまわして体ごと抱き寄せました。鼻腔の奥に漂う淡い香り… 大人の女性だけがまとう微かな甘い香りが私の淫らな願望を駆り立てます。
「ま… 真奈美さん…」
重ねた唇の隙間から舌を中に挿し入れ、彼女の舌に絡み合わせます。あたたかく柔らかな感触が体を内側から溶かしながら、さらなる欲望を煽ります。
股間の勃起は行き場を無くしたまま張り詰め、真奈美さんの体奥を求めながら狂おしい程に火照りを増していきます。
一年以上も性の交わりが途絶えていた22才の私には、人妻である真奈美さんの全てがあまりに眩しく、愛おしかったのです。
>> 欲望と官能のブログをもっと見る(FC2)>> 男女の性に関するブログをもっと見る