私は電車の中で、鼓動の早まりを静めながら冷静さを取り戻そうとしていました。真奈美さんが再び私と会う理由… DVDレコーダーを買うために私を誘うぐらいなら、彼女が夫に頼めばいい筈です。
例え一時でも真奈美さんを性の欲望を満たす対象として見つめ、それを叶える為の企てをした私を、彼女の方から買い物に誘うなどとは信じれなかったのです。
保険の外交員として多くの客と接している彼女にとって、私のような想いを抱く男性は珍しく無いのでしょう。
美しい容姿と凛とした立ち振る舞いを合わせ持つ彼女は、多くの男にとって理想の存在だからです。
真奈美さんにとって私は、数多い不埒な男の一人にすぎないのでしょうか。
「口実」の真意が何であれ、彼女と二人で買い物に出かけることは、私にとっては思いがけない嬉しさと喜びに満ちた「デート」でした。
翌日の午後、早る気持ちを胸の奥に押し込み、彼女と待ち合わせしている秋葉原へ電車で向かいました。
昨日の出来事に対する引け目を引きずりながらも、その事を思い出さないように、そして少しでも真奈美さんから私に対する「好感」が上がるようにしなくては、そんな思いを巡らせながら駅の改札で彼女を待ったのです。
不意に鳴る携帯の呼出し音に、慌ててポケットから電話を取り出しました。
「真奈美です… 今、川島くんの真後ろにいるよ」
思わず後ろを振り返ると、笑みを浮かべた彼女が私の真後ろに立っていたのです。
「あ… こ、こんにちは」
慌てる私の仕草を楽しむ彼女の笑顔からは、昨夜のわだかまりは消え失せています。
それよりも、真奈美さんが私を「川島さん」ではなく「川島くん」と呼んでくれたことが嬉しかったのです。
今までのような生命保険のセールスレディと客の関係ではなく、プライベートで私と接してくれている証に思えました。
結婚している彼女が10才も年下の私に特別な感情をもつ筈など無いことは承知しています。
彼女が私のことをどう思っていようが構いません。真奈美さんが手の届かない存在であっても、人妻であっても、美しい憧れの女性と休日を過ごせるのです。
私にはそれだけで充分でした。
昨日の夜、私はネットでDVDレコーダーをセールしている家電店を調べておきました。プリントアウトしたカタログを真奈美さんに見せながら、早る気持ちを隠そうともせずに彼女を店に連れて行ったのです。
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