<前ページより>
沢田さんは、私の妻の関心を引きそうな話題を予め用意していたようです。話の内容そのものよりも、心遣いが妻の沢田さんに対する好感度をより高めたのかも知れません。
夫である私にしても、妻を彼に安心して託すことが出来そうです。他人に抱かれる背徳の自責と躊躇いを超える程の性の悦び… それを妻に与えて欲しいと心の中で願いました。
会計を済ませ、私達四人は街灯の並ぶ店の外へと出ました。
「よろしければ今この場で、お互いのパートナーを交換しませんか?」
歩きながらの会話が途切れたタイミングを見計らって、沢田さんが私達に提案したのです。
「今から貴子を、川島さんの妻として接しても構いませんから」
全てはホテルに着いてからと思っていた私は、一瞬、言葉に詰まりながら由香里の表情を確かめました。慌てて目を反らした彼女の仕草は、私に今夜の全てを委ねているかのようです。
「判りました。こちらこそよろしくお願いします」
私はそう言いながら由香里の背中に手を添え、沢田さんと互いの妻を交換したのです。
貴子さんは私の顔を見つめながら、寄り添うように側に立ちます。彼女は小悪魔のように微笑みながら小声で「よろしくね」と言うと、あらたまって会釈しました。
彼女が今から私の妻… 一夜妻なのです。
いかなる交わりも、貴子さんとの受精だけを避ければ、全てが許され叶えられるのです。
「今から予約したホテルに行くのも、その前に近くで時間をつぶすのも、それぞれの自由ということにしましょう。ただし… 深夜12時過ぎに、お互いの部屋を訪問しませんか…」
沢田さんの言葉に、私は黙って頷きました。
彼の横にいる由香里… 沢田さんの一夜妻である由香里は、敢えてその言葉に表情を変えませんでした。
少し安心した気持ちと、何かが欠けているような、互いが入り混じった不思議な感情です。
一時であれ、由香里の姿が私から見えなくなることへの不安… もしかしたら、それも嫉妬の情感の一つなのでしょうか。
由香里が沢田さんと愛し合い、交わる姿の一部始終を見届けることが出来ないことに、焦りと妬みを感じていたのかも知るません。
夫から見えない場所で、他人と肌を重ねながら交わる私の妻… そんな彼女の姿を想い浮かべながら、愛おしみ慈しむことも夫婦交換の一つであると感じられるようになったのは、もう少し後のことでした。
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