数日後、会社の昼休みに真奈美さんがオフィスを訪れました。
彼女は2~3日に一度の割合で営業の訪問に来ているので、そろそろ会える頃だと思っていたのです。
「この前はパーティーに来て下さって、ありがとうございました。あまりお話し出来なくてごめんなさいね」
「あ… いえ、お忙しかったみたいですから気にしないで下さい」
私は気持ちとは裏腹の言葉で返事をしました。彼女を自慰の対象としていることに、後ろめたい気持ちがあったことも理由の一つです。
「お昼休みに申し訳ありません。お時間を頂けましたら、このシートにお名前と生年月日、病歴や見込みの年収を記入して下さいますか? 保険のプランを見積もらせて頂きたいのですが」
やっぱりそうだよな…
俺に近づいてくるのは、保険の勧誘が目的なんだよな…
「はい…、いいですよ」
私は手渡されたシートの項目に記入して、真奈美さんに返しました。
「早速、これで幾つかプランを出しますから。コンピューターで処理しますので、明日には御説明出来ます」
彼女にとっての契約候補者でいる限り、この後も何度か会えるかな…
断るのはもっと後でもいいや…
私はそのことに少なからず嬉しさを感じていたのです。
真奈美さんをエレベーターの前まで見送り、私は午後のオフィスへ戻りました。
いつの間にか私は、漠然とした淡い期待を彼女に寄せていたのかも知れません。彼女にとって私が契約の候補者で居続ければ、少なくとも他の社員よりは特別な存在でいれる… そんな想いだったのでしょう。
真奈美さんから会社に電話があったのは、その日の夕方頃でした。
「さっき、コンピュータで見積もったプランが届いたんです。無理に頼んで急いでもらったんですよ」
真奈美さんは嬉しそうな声で話を続けます。
「急で申し訳ありませんが、会社が終わってから時間を頂けませんか? 場所は川島さんが指定して下さって構いませんから」
「え? 今夜ですか」
「御予定があるなら仕方ありませんが… もし、御都合がよろしければ」
私には迷う余地などありませんでした。彼女の方から二人だけで逢う機会を与えてくれたのです。
「はい… 大丈夫です。場所は何処でもいいですよ」
突然の誘いに対して、何も心の準備が出来ていない私には、型どおりの返事をするのが精一杯だったのです。
「じゃあ… 新宿にしましょうか? 川島さんは中野にお住まいだから、遠回りにならないし」
私は、彼女が指定した待ち合わせ場所と時間を慌ててメモし、間違いのないことを確かめてから電話を切りました。
生命保険の外交員が、保険契約のセールスのため客と会う… ただそれだけのことなのに、まるで年上の女性とデートでもするかのような気持ちでした。
今夜、真奈美さんが私と会う目的を判っていても、彼女に対する密かな好意と妄想が、それを認めることを拒んだのです。
私は高校生の頃から30代の女性に、強い憧れとともに性的な対象としての関心を抱いていました。近所の若い人妻や駅で見かけるOLの姿に対し、叶わぬ夢想に浸りながら幾度も自慰の対象としていたのです。
若く身勝手な欲望を優しく許し、その全てを受け入れてくれる… 年上の女性に対する私の想いは、性的理想の具現化に似た願望が入り混じったものだったのかも知れません。
私は急いで仕事を片付け、チャイムが鳴ると同時に会社を出て駅に向かったのです。
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